全レース解析結果について
月額制メルマガ『解析競馬原論・トリプルC』では、中央競馬と南関競馬の全レース解析を配信しております。配信内容は全レースの◎○▲を記載しただけのシンプルなものとなっていますが、これは馬券成績に直結する情報(Core)だけを簡潔に(Compact)お届けし、皆さまの競馬予想の羅針盤(Compass)になりたいとの思惑からです。当ブログでもメインレースの解析結果を無料公開いたしますので、以下のデータも参考に、皆さまの馬券戦術に役立てていただければ幸いです。
①直近5年間(2019~2023)の中央競馬全レースにおける◎○▲の成績
【◎】単勝率23.1%、複勝率51.3%、単回収93.6円、複回収89.3円
【○】単勝率16.5%、複勝率43.3%、単回収85.5円、複回収85.7円
【▲】単勝率12.7%、複勝率37.0%、単回収82.9円、複回収84.5円
②推奨買い目のシミュレーション成績(中央競馬)
【単勝】的中率24.7%、回収率104.1%
【馬連】的中率16.6%、回収率105.1%
【合計】的中率31.4%、回収率104.5%
③直近5年間(2019~2023)の南関競馬全レースにおける◎○▲の成績
【◎】単勝率15.3%、複勝率36.6%、単回収102.3円、複回収92.3円
【○】単勝率13.6%、複勝率35.7%、単回収 93.5円、複回収88.6円
【▲】単勝率12.8%、複勝率35.1%、単回収 85.4円、複回収84.1円
④推奨買い目のシミュレーション成績(南関競馬)
【単勝】的中率11.8%、回収率115.8%
【馬連】的中率 6.7%、回収率118.6%
【合計】的中率15.0%、回収率117.0%
総合指数について
当ブログの「重賞予想」では、出走馬全頭の能力を視覚化した総合指数を活用します。メルマガの解析結果とは異なり、あくまでも期待値ではなく好走確率を目的変数とした「能力指数」であることにご注意ください。日刊スポーツの「コンピ指数」やTarget frontierJVの「ZI指数」に近いイメージですが、総合指数では各馬のイメージをより具体化するため、ファクター別の点数も公開しております。サンプルとして、2024年高松宮記念の出走馬全頭の総合指数を見てみましょう。
総合指数は、基礎能力値・血統補正・展開補正・走破補正・人物補正・成長補正という6項目の点数を合計したものです。Family Numberは、後述する牝系分析で参照するために記載しています(地方競馬では牝系分析を行わないため、省略いたします)。各ファクターの概要は、以下のとおりです。
①基礎能力値
過去走の成績・データをもとに、各馬がレースで発揮しうる能力を1~99の値で示しています。いわゆる「スピード指数」に相当するパラメーターですが、各馬の「最大出力」を重視して算出している点が、類似の指数と比較した場合の特色となります。したがって、各馬の「格」を表した数値であるとも言えます。
②血統補正
今回レースと同一コースにおける種牡馬(父・母父)成績をもとに、各馬の好走確率を5段階評価で補正しています。
③展開補正
今回レースと同一コースにおける直近1年間の枠番・脚質別成績をもとに、各馬の好走確率を5段階評価で補正しています。
④走破補正
過去走における走破タイムの相対評価をもとに、各馬の好走確率を5段階評価で補正しています。
⑤人物補正
直近1年間の騎手・調教師成績をもとに、各馬の好走確率を5段階評価で補正しています。
⑥成長補正
過去走におけるパフォーマンスの推移をもとに、各馬の好走確率を5段階評価で補正しています。
注意事項として、基礎能力値が地方競馬も含めた競走馬全体における絶対評価であるのに対し、補正後の総合指数はそのレースにおける相対評価となります。そのため、総合指数の点数そのものを気にするのではなく、他馬との総合指数の「差」に注目することが重要といえます。
具体的な総合指数の捉え方(解釈)は様々ですが、その精度には自信を持っております。もちろん、当ブログの「重賞予想」でも総合指数のポテンシャルを最大限に引き出していきますので、ぜひご期待ください。
ちなみに、基礎能力値で最高評価の99点を獲得した競走馬の例としては、2021年宝塚記念のクロノジェネシスがあげられます。先行馬を並ぶ間もなく抜き去り、2馬身半差の圧勝で牝馬初のグランプリ3連覇を成し遂げた同馬ですから、納得の数字かと思います。
牝系分析について
一般的な「血統予想」は種牡馬の特徴や産駒成績を活用するものが大半ですが、当ブログの「重賞予想」では、上記の総合指数とともに「牝系分析」を予想の軸とします。種牡馬(父系)ではなく牝系(母系)を重視するのは、次のような科学的根拠にもとづきます。
- 競走馬の心肺機能(心臓の大きさ)を決定する遺伝子はX染色体に含まれ、伴性遺伝により種牡馬から牡馬には伝わらない1。
- 競走馬の運動能力(エネルギー代謝)を左右するミトコンドリアDNAは母性遺伝であり、種牡馬から産駒には伝わらない2。
- 豪州の競走馬を対象とした統計分析では、父系よりも母系のほうが競走能力に大きな遺伝的影響を及ぼすと推測されている3。
牝系分析に際しては、高柳誠二氏によるファミリーナンバーの3分類を援用し、今回レースと同一コースにおける直近10年間の牝系タイプ別成績にもとづいて、各馬の適性を見極めます。ただし、成績集計の対象馬は、単勝2~7番人気に限定します。これは、ファクターに関係なく回収率が80%に収束しやすい1番人気馬、および極端な穴馬のフロックが成績集計に影響を与えないようにするためです。
たとえば、高松宮記念の舞台である中京芝1200㍍の牝系タイプ別成績は、以下のとおりです。
正反対の特徴を持つ地力系と極軽系がともに好成績を収めていますが、これは当日の馬場状態や想定ペースによって、中京芝1200㍍で求められる適性が大きく異なるからだと考えられます。2024年高松宮記念は、前日から断続的に雨が降るなかでの開催でしたから、稍重~不良馬場に限定した牝系タイプ別成績も見てみましょう。
予想どおり、悪条件下の中京芝1200㍍では底力に富む地力系が好走する傾向にあるようです。この牝系タイプ別成績と総合指数を組み合わせれば、2024年高松宮記念を制した(02)マッドクールに◎を打つことは、十分に可能であったと思われます。
- Marianna Haun, The X Factor: The Relationship Between Inherited Heart Size and Racing Performance (Wisconsin: Russell Meerdink Company, 1997). ↩︎
- 堀田茂「ミトコンドリアとファミリーライン:生物学的観点から見る母系の重要性」『サラBLOOD!』vol.3、2014年9月、124–129頁。 ↩︎
- Xiang Lin, Shi Zhou, Li Wen, Allan Davie, Xinkui Yao, Wujun Liu, Yong Zhang, “Potential Role of Maternal Lineage in the Thoroughbred Breeding Strategy,” Reproduction, Fertility and Development 28(11), May 2015: 1704–1711. ↩︎